東京メトロ丸ノ内線の中野坂上駅から徒歩で数分のところにある、宝仙学園小学校を訪問した。
既に乗車していた電車の中から、お受験スーツ姿の男女がいた。同じ駅で降りたので、間違いなく宝仙学園に行くのだろうと思った。駅の改札の前にも、学校関係者がプラカード持ち立っていて、お受験スーツの集団が移動する流れに乗り(というよりは流された感じだ)、あっという間に学校にたどり着いた。
基本、男女共にお受験用と思われる紺色のスーツを着用していた。年齢層は様々。子連れの女性もいて、その人は普段着のような感じだったが、別の親子の子供達(兄弟かな)はお受験スーツのような格好をしていたので、色々だった。
学校の前には複数の塾勧誘スタッフが立っていて、資料を配布していた。お受験スーツの集団は、基本的に差し出された資料を受け取らないスタンスのようで、皆さん基本スルー状態。逆に、受け取った人にはワッと群がっていた。その光景にはちょっと笑ってしまった。塾勧誘スタッフの必死さが伝わりすごかったな。
そして下駄箱に到着した。靴袋(ビニール袋)を受け取り、持参したスリッパに履き替えた。靴を入れた靴袋を入れるカバンがあったほうがいいということは、この時はまだ知らなかったため、持参しなかった。そのため、ずっとこのビニール袋を持ち歩いていたが、邪魔で見た目も汚らしく、あまり良い印象は受けなかった。今から思えば、どこの学校でも同じことなので、当校だけがそういうシステムになっているというわけでは決してない。
この日のプログラムは、まずは授業見学からスタートした。自由に校内を見学できたのが好印象。ただ、見学者の人数が尋常ではなく、廊下はすし詰め状態。大人が多くいるだけでも狭いのに、靴を入れたビニール袋やカバンを手に持っているので、さらに狭く感じられた。さらに時間が限られていたため(40分程度だったかな)、じっくり見学したというよりは、スルリスルリと空いてそうな教室に入って見学する、または廊下からさっと見学するといった感じだった。
最初に見学したのは、1年竹組の算数の授業だ。百玉そろばんを使用しての授業で、担任だけが大きなサイズの同じようなそろばんを使用していた。大きなサイズのは見たことがなかったので、強く印象に残った。
2年の教室では、見た目が私の下の娘にそっくりな女子児童が居たのに驚いた。挙手をして答える場面では、かなり元気良く「はいはいはいはい」と担任に当てて欲しがり、当ててもらうと「あのあのあのあの」と勢いのあるような、元気すぎるような感じで回答していたのが、娘にそっくりで微笑ましく感じた。同じような子がいるものだなと、帰宅してからも家族で話したので、良い印象が強く残った。
教室外に置いてある授業の資料(プリント)を頂くことが出来たのだが、唯一、5年の算数の授業の資料が行った時にはもうなかった。低学年の授業から見学していたため、高学年の授業にたどり着く頃には、もう遅かったということだ。それほど見学者が多かったということで、低学年の資料の周りには争奪戦のような雰囲気だった。
理科実験室で、水素の授業だったかな、シャボン玉を作っていた。
一番集中して見学したのは、ストップモーションアニメーションを製作する授業。校長も見学に来ていた。こちらはすし詰め状態ではなかったので、入室して見学した。HP製のタブレットに、アプリはStop Motion Studioを使用していた。積み木のブロックを一コマずつ撮影していた。例えば、積み木を手で割っている様子などだ。各自グループごとに考えて撮影していた。その中で、1人騒がしい男子児童がいて、担任に「1回目」「2回目」と言われて、3回注意されたらアウトのような感じに言われていた。ただその様子はシリアスなものではなかったので、その場が凍りついていたと言ったことは全くなかった。
命の授業も見学した。DVDまたはスライドのようなものを観ながら手話について学んでいた。
音楽の授業では「あまちゃん」のテーマ曲を演奏していた。
図書室の蔵書数は、多くもなく少なくもなくという感じだった。女性の司書が常駐していた。綺麗で静かで涼しく、我が家の娘たちも好きな、NHK BSプレミアムで放送していた「ローニャ」を紹介するコーナもあった。
理科の観察コーナーには、エビの殻が展示してあり、自分でそれを触ったりできるのだが、それが興味を喚起するもので大変良かった。この理科観察コーナーのような場所を学校で見たのは、恐らくこれが初めてだったので、この発想を自宅でも真似できないかと思ったくらい、強い印象を受けた。
PC室には、Windowsパソコンがあり、プリンターはZerox製だった。1人一台という感じで、結構大きめのデスクトップPCだった。
電子黒板が見学した全教室にあった。電子黒板と小さいモニターのようなものが窓際にあるのに加えて、廊下側にも大きめのモニターがあった。そのおかげで、教室のどの場所からもよく見られるように工夫がされていると思った。
感謝がテーマの作文が廊下に展示してあり、どの児童の字も綺麗だった。同じく廊下には、行事の写真があちらこちらに展示してあった。
進学指導の教室もあり、昨年度の卒業生の進学実績が貼ってあったり資料が置いてあったりした。興味があったのは、各教室に掲示してあった、10の約束のようなものだ。教育目標のようなものだろうか。その後行った説明会で、それが宝仙スタンダードというものだと知った。
ちなみに妻と行ったのだが、最も印象的な授業は、2年の国語だったそうで、枕草子を学んでいたからとのことだった。確かに、この学齢で枕草子はすごいなと思った。
トイレも妻のみ利用したが、綺麗で、キレイキレイのような石鹸が置いてあったそうだ。蛇口は全部普通の捻るタイプだが、便器は全てウォシュレット。
休み時間で児童達がすれ違ったが、挨拶をしてくれたくれなかったの記憶は特になかった。結構廊下が混雑していたので、それどころではなかったのかもしれない。
校舎は、見学した箇所のみだが、古い感じがしたが、清潔に保たれていた。エレベーターは見かけなかった。
そしてチャイムが鳴り、見学者は皆、説明会に「流された」と言う感じだった。説明会の会場は体育館だったので、一度外履きに履き替えて、靴袋を持ったまま外の小道を歩いて、体育館でまた上履きへ。その時撮った自分のIDがこれだ。
学校訪問の際には、訪問したという記録(証拠)として正門を撮影しているのだが、この日はあまりの大混雑でそれどころではなかった。やっと撮影できたのが、このIDだったというわけだ。
体育館では説明会がスタートした。説明会では、ノージャケットの父親がいたが、ほとんどはジャケット着用のスーツ姿だった。そして結構な数の父親が着席していた。お受験スーツ姿で気合いが入っている集団に比べて、教員は皆さんゆったりとした印象だった。緊迫した様子ということは全くなかった。参加人数だが、ざっと見た感じだったのでアバウトだが、800人は最低でもいたと思う。
説明会は、校長挨拶でスタートした。日本の良さを世界に伝えていくというのが、教育の内容だそうで、全員が国公立私立大学を受験しているとのことだった。愛情があるだけでなく、あふれる学校。人間性と専門性に優れた教員がチーム力を伴って行動しているそうだ。
続いて、ハード面の充実についての話があった。60周年で校舎内をリニューアルした。子供達のために、机や椅子を全部入れ替えた。少し広めの机の上は白くなったので、大変明るい雰囲気になった。椅子も軽くなった。トイレも同時に改修して、全部ウォシュレットにした。施設の面積としては多少狭いところもあるが、「中身で勝負する」と心強い言葉を述べていた。狭いが楽しい、我が家のようで、男女も仲良いとの話もあった。
ソフト面の充実についてだが、安心・安全対策は「備えあれば」をベースに講じているとのことだった。311後には災害時に備えて、サーバーを韓国に置いている。児童達はICカードを持ち、登下校時にメールで保護者に連絡が行くようになっている。タッチしたら、登下校が分かるので、もし遅かったりしたら、何かあったのかもしれないとわかる仕組みらしい。これはどの学校でも実施してほしいと私は思った。最近、私立の小中高が災害時のためのネットワークを構築したので、通学途中で災害が発生して避難が必要な場合でも、近くの私学に避難ができる仕組みが整ったとの説明があった。
ここからは、今日の公開授業では、ストップモーションアニメーションの授業を担当していた教員が教育内容について話した。宗教の授業はないし、教えるものでもない。宗教的な理想の中での情操教育を行っている。英語は1年からやる。
教育目標は、高い学力と、豊かな情操。生活面の安定を基本としていて、これがないと勉強どころではないそうだ。机を綺麗にして、生活ペースを整えることにより、心も整える。「生活力がベース」とのことだった。低学年から生活指導をしている。
教室内に掲示されているのは、宝仙スタンダードと呼ばれているものだそうだ。成長段階ごとに視覚化している。高い学習意欲を持ち、ただ静かに座っているだけではダメ。主体的に授業に参加して学ぶことが大切。活発な意見交換もそれには必要とのことだった。
教員については、教員間の共通理解が大切。芯はブレずに。「教育はチーム力がとても大切」。教員の役割として、学習面の充実と安定した生活を習慣化させることが大切。それらが児童の一生を支える力になるとのことだった。
続いて進学指導についての話が、高学年の入試担当の教員からあった。それぞれの児童にふさわしい中学校への進学を目標にしている。そしてここでも、生活面と学習面を習慣化することが大切との話があった。その生活面については、自分のことは自分でするようになることが大切。5年から中学受験を意識し始める。5-6年は教科担任制。習熟度別の授業も行っている。受験に対応できる力を育てる。6年の2学期では発展的な学習をしている。独自の教材を用いての受験指導。独自の模試も行っている。学校での学習だけで受験対応が可能な内容になっている。主体的に、意欲的に取り組めることを低学年からやっている。やはりここでも日々の生活力が大切。学校全体で受験が成功するように児童を支えている。児童自身が達成感を感じられるような指導をしているとの話だった。
ここからDVDが上映された。遠足や、手話・けん玉をやる様子を含めて、一年の流れも分かる内容だった。児童が作成したDVDだったと思うが、上映後に拍手を求めることについては、この日唯一の違和感を感じてしまった。個人的に、拍手は自然発生が望ましいと思っているからだ。
そして具体的な入試の話があった。知能検査があるそうだ。幼稚園や塾に相談して、推薦入学という方法もあるそうだ。内部:推薦:一般の比率は、1:1:1だそうだ。兄弟姉妹が在校生の場合の入学金割引制度や、健康診断書の提出についてなどの事務的な話もあった。
食物アレルギーについては、給食で対応が可能だそうで。医師の診断が必要。給食も教育の一環とのことで、弁当持参は不可。好き嫌いがある場合は、家庭で克服してくださいとの話だった。
続いて入試の具体的な内容についての話があった。子供が試験中に、保護者の面接があるそうだ。点数化して判断する。ペーパーテストがあり、面接など他の結果に問題がない場合、ここがポイントになるそうだ。一般入試の方が高い点数になる。記憶力が問われう問題も出る。指示があり、ページをめくり、鉛筆を持ち、・・・の流れ。規則性を問われる問題も出るそうだ。文章はすらすら読めなくてもいいが、童話から出題されることがあるそうだ。集団で実施するので、音読する必要はない。ひらがなのみで、漢字やカタカナはない。行動観察もある。巧緻性では紐結びがあるそうだ。集団行動では、課題が与えられて、同じように行動するかが見られる。ここで自由に積み木遊びをしたりしていると、「支障をきたす」ため、他の結果に関係なく不合格になるそうだ。子供の面接もある。待っている様子・態度も見るそうだ。
保護者面接では、家庭の教育方針や希望、子供の名前の由来などが聞かれることがあるそうだ。仏教徒でなくても大丈夫。ただ、合掌があったり、花まつりをお祝いしたりするので、その点はご承知おきくださいとのことだった。授業からも説明会からも、強い宗教色は感じられなかったので、その点は熱心な仏教徒でなくても問題ないだろう。
そして説明会が終わった。終了後の個別相談コーナーには、数百人と思われる人が相談をしたり待っていた。外に出ると待機したのは複数の塾勧誘スタッフ。帰りの方が、資料を受け取る人が多かったかな。私も受け取った。そして、お受験スーツ姿の集団と共に、中野坂上駅まで流されて、この日の訪問は終了した。これがその後の数多くの学校訪問の始まりとは思ってもみなかったのだが、宝仙学園小学校で受けた「衝撃」のようなものがあったのかもしれない。
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