西武拝島線の武蔵砂川駅前にある保育施設、スマイルエッグスの新しい建物の内覧会に行った。ふじようちえんが運営する保育施設だ。内覧会の前に、同日開催の同幼稚園の園舎見学会に行った。スマイルエッグスから徒歩で約15分弱のところに幼稚園の園舎があった。隣接する複合施設のふじキッズテラスに到着すると、ものすごい見学者の集団が・・・
当日は写真撮影は許可されていたが、このブログに掲載するにあたり、子供の顔が識別可能な場合はぼかしを入れた。撮影した枚数が相当あったため、ブログは何編かに分けて掲載することにした。今回は建物編だ。
OECDに世界で最も優れた教育施設に選ばれた、ドーナツ型の園舎は、世界の建築・幼児教育関係者の間では有名だ。英語表記だと「Fuji Youchien」だからか、海外では富士山の「富士」と関係がある幼稚園だと勘違いされていることもあるそうだが、漢字表記では「藤幼稚園」だ。園内に咲く藤の木に由来している。モンテッソーリ教育を実施していて、英語・国際理解教育に力を入れているが、日本の伝統もしっかりと教えている。教育内容も大変興味深い幼稚園だ。
(ほぼ)楕円形の園舎は世界的にも珍しい。「ほぼ」というのは、きれいな楕円形ではないからだ。そしてきれいな線ではないところが、逆に良い。ホッとさせてくれる、そんな園舎だ。形として一番近いのはアップル社の新社屋くらいかもしれないが、あそこは写真で見るかぎり円形だから、当園とは違う。首都圏で類似の学校で不思議な形だと、日本女子大学附属豊明小学校のタツノオトシゴのような形の校舎と、湘南学園小学校の貝殻の形をした校舎くらいしか思い浮かばない。円形校舎は昔は複数あったようだが、最近では珍しくなったようで、世界中から訪問者が連日のように訪れている。建築がきっかけで訪問する建築・教育関係者が多いそうだが、園長の加藤積一氏も、建築家の手塚貴晴氏も、見て欲しいのは中身というようなことを話していた。その中身についてはまた書くとして、今回は「外観」を中心に書くとする。
写真の中央では、園長と手塚夫妻によるミニ講演会が開催中だ。3人が座っている場所が屋根だが、当園の屋根は走っても、木によじ登っても全く問題ない。屋根の下には園児達の部屋がある。外壁は・・・ない。全面ガラス張りだ。
ガラスの窓は左右に開け放すことが可能だ。そして、ガラスと言っても重いガラスではないようだ。飛散防止フィルムが貼られているからか、やや曇ったように見られた。
園舎の東南方向に隣接するのが、この円形の英語教育施設、イングリッシュ・ツリー・ハウスだ。手前の木製の小屋も英語の授業で使用されている。
園舎の北東側には、2014年に完成した複合施設のふじキッズテラスがある。実は今回が2回目の内覧会参加で、この2014年の内覧会が1回目だった。2年の月日が経ったが、園児達が日頃から幼稚園児らしく(壁や窓をペタペタと触ったりなど)ここで過ごしていると思うが、経年劣化は全く見られなかった。専門業者がメンテナンスをしているのだろうか?もしかすると先生方が?
給食調理室やランチルーム、英語・国際教育のための部屋、和の心を学び親しむための和室、そして、西には山々、東には都心を眺められるオリーブの木が立つ屋上がある。
屋上からは園舎も一望出来る。この日は(一般の)保育がないため、園児達が走り回る様子は見られなかったが、普段は園舎の屋根をぐるぐると走り回るそうだ。
テラスから下に降りて、ちょうどテラスとツリー・ハウスの間にある馬小屋へ行ってみた。ポニーが2頭いた。はるちゃんとシルバーちゃんだ。この日は見られなかったが、平日には園庭に放し飼いにしていることもあるそうだ。都内の幼稚園の庭に、放し飼いのポニーがいるという光景を想像しただけで見たくなってしまった。機会があったら見てみたい。
園舎のまわりには木々がある。こちらの木もその高さから、園舎がドーナツ型に改築される前からある木だと推測される。
緑がいっぱいの南側。
職員室にも壁は・・・ない。園庭側のガラス窓が開放されていたので先生方の机まで見える。これほど開放的な職員室は他にはない。急病の子が一休み出来るベッドの左側には園長席があった。園内の部屋を一望できるスポットだ。ここで仕事をしながら、子供達の様子が見ている「お父さん」のような存在だ。素晴らしい。その園長席の前では、園長や手塚夫妻が多くの見学者(中国人?)からサインを求められていた。当日は、見学者の数が200名以上はいたような気がしたが、幼稚園や手塚建築研究所の皆さんが、和やか雰囲気のなか、温かく対応してくれた。おかげでのんびりと(マイペースで)見学することが出来た。自由に見学するだけでなく撮影も出来た。教育施設をこれだけオープンにしている所はなかなかない。心から感謝したい。
そして歩いて武蔵砂川駅前のスマイルエッグスへ移動した。当日は新しい保育施設の完成内覧会だったため、こちらも建築関係者やその家族が多数訪問していた。到着すると、明るい茶色の、駒を逆さにしたというか、傘というか、椎茸という(色的にはなめこ)ような形の建物があった。大勢の見学者で賑わっていた。
園長と手塚氏のミニ講演会では、先生が傘をさす場面があった。見学者も皆、満面の笑み。
建物の内部は意外と広かった。そして、こちらでも幼稚園の園舎同様、生活をする園児達(ここでは乳児)にとって必要のないものは隠している。エアコンもトイレもしっかりと隠してあった。
真ん中に柱があり、当日は見学者の子供達がぐるぐるとエンドレスに走っていた。
外の一般道に面している側には壁があるが、スマイルエッグスの本園舎側は全面窓だ。真新しいフローリングが気持ち良い。ここを小さい人達がハイハイをして過ごすそうだ。下の写真が、スマイルエッグスの本園舎だ。ログハウスだが、当日は保育をしているため見学は出来なかった。こちらも内部がどうなっているのか気になった。
ふじようちえんの園舎にも、スマイルエッグスの保育施設にも、あるものとないものがある。あるものは透明性でないものは壁だ。日々の教育・保育にとって園児の目線から考えて必要ではないと思われるものはないのだと思った。壁もその必要ではないものの1つだと思った。そして、必要なものであっても、便利であるとは限らない。例えば、当園では、部屋の電気をつけるためには、(園児にとっては)多少の力を入れて紐を引っ張る必要がある。リモコンでピッ・・・ではない。古き良きことを次世代に継承していくだけでなく、英語や国際化など次の時代も見据えた教育をしている。特色のある教育と園舎で、日々学び、生活をする園児達を支える職員達の存在も大きいし、そしてこの取り組みを、全世界に発信し続けている建築事務所のスタッフの皆さんも忘れてはならない。当園に携わる全ての人達が力を一つにして作り続けているのが、ふじようちえんである。
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